研究概要 |
完全交叉のレフシェッツ性問題に関する研究を継続した.本研究の当初の目的は,次の2つ問題を解決することであった. 問題1:完全交叉は強いレフシェッツ性をもっか? 問題2:完全交叉のリンケージクラスに入るゴレンスタイン環は弱い(または強い)レフシェッツ性をもつか? とくに問題1に関しては,渡辺純三氏(東海大学)の協力の下で、完全交叉が強いレフシェッツ性を持つ判定方法として,中心的単純加群なる概念を導入し,それを使った新しい手法の開発など,一定の成果を得ることができた.また,和地輝仁氏(北海道工業大学)の協力の下で,k階レフシェッツ性なる概念を導入し,完全交叉のジェネリックイニシャルイデアル決定問題への応用を図ることができた.主要な結果は以下の通りである. 1.ゴレンスタイン環が強いレフシェッツ性をもつ必要十分条件はある一次式の中心的単純加群たちが強いレフシェッツ性をもつことである。さらに、応用として、有限自由拡大において、強いレフシェッツ性は保たれることを示した。また、この定理を使って、次数が連続するベキ和多項式で定まる完全交叉は強いレフシェッツ性をもつことなど,強いレフシェッツ性をもつ完全交叉の様々な例を構成した。 2.n変数多項式環において、n階強レフシェッツ性をもつイデアルのジェネリックイニシャルイデアルは、そのヒルベルト関数で定まるalmost revlexイデアルに一致することを示した。この定理を使って、様々な完全交叉のジェネリックイニシャルイデアルを決定した。 次は興味深い問題であり,今後の研究テーマである. 問題:対称式からなる完全交叉は強いレフシェッツ性をもつか?
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