研究概要 |
自然数1,2,...,mを項にもつ有限数列Iに対応して,m成分絡み目のミルナー不変量μ(I)が定義される.本研究では,リンク・ホモトピーより細かな同値関係として,自己Cn-同値を考え,この同値関係とミルナー不変量μ(I)との関係を調べることを目的とする.ここでリンク・ホモとピーとは,ミルナーによって定義された絡み目の同値関係であり,自己Cn-同値は,n=1の場合にリンク・ホモトピーと一致する. 有限数列Iの中に同じ数が現れない場合は,μ(I)がリンク・ホモトピー不変量となることがミルナーによって示され,更に,ストリング絡み目のリンク・ホモトピー分類が,ミルナー不変量で与えられることが,ハベガーとリンによって示されている. 18年度の研究では,以下の結果を得た. ●Iの中で同じ数が高々n回しか現れない場合,μ(I)は自己Cn-同値の下で不変量になる.これは上述のミルナーの結果の一般化になっている. この研究成果を踏まえて,19年度は,ミルナー不変量が自己Cn-同値の分類に対して,どの程度有効であるかをn=2の場合に限って研究した.その結果,次の2つの事がわかった. ●ストリング絡み目のC2-同値分類は,ミルナー不変量だけでは与えられない. ●絡み目が自己C2-同値で自明になる為の必要十分条件は,Iの中で同じ数が高々2回現れるミルナー不変量の値が全て0になることである. つまり,ミルナー不変量はC2-同値の分類には十分でないが,C2-同値で自明になるか否かの判定には十分である事がわかった.
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