研究概要 |
3次元多様体上の葉層構造に対し,W.Thurstonにより,その葉層構造がReeb成分を持たなければ,その葉に接する平面場のEuler類に関する所謂Thurstonの不等式が成立する事が示された.しかしながら,3次元球面上の古典的なReeb葉層もこのThurstonの不等式を自明に満たしており,また,本研究に関わる以前の研究によりReeb成分を持つ葉層構造に対してもその不等式が成立する場合が他にもある事がわかってきていた. 2006年度の本研究の成果として,或る種の葉層構造(回転可能葉層)に対して,不等式が成り立つ為の或る十分条件を得た.また,Thurstonの不等式が成立しない状況を具体的に捉える事ができた.それらは,回転可能葉層を定めるmonodromy微分同相の言葉で記述される. 2007年度は,より精しい不等式(Thurstonの不等式相対版)に関して,接触構造の葉層構造への収束という観点からの前年度までの研究成果を踏まえ,研究を深めた.また,Reeb成分を持ち,かつThurstonの不等式を満たす葉層構造で,それまでに知られているものは総てその(接束の)Euler類が自明であったが,非自明であるものを組織的に構成する方法を開発した.回転可能葉層のEuler類の非自明性を保証する或る条件が前年度までの研究で得られている.その条件を満たす回転可能葉層のReeb成分をDehn手術することによって,新しい葉層構造でReeb成分を持ち,Euler類は非自明であるものが得られる.このとき,D.Gabaiのsutured manifold理論により,元の回転可能葉層をうまく選べばThurston normが縮退するDehn手術は有限個であることが示せる.
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