研究概要 |
我々の開発した再生核理論と正則化理論の融合理論は,従来難問として解き得なかった様々な逆問題の有効な解法として用いることができる. (1)熱伝導問題の逆問題も難問として有名であるが,我々はこの問題に対しチコノフ正則化を用いて具体的な逆問題計算のアルゴリズムを与え,数値実験も行い有効性を確認した.また,解法の有用性を明示するため,解のビジュアル化を工夫した.これら一連の進展によって熱伝導の逆問題は一応の解決を見たといってよい. (2)無限精度計算の計算環境をハード,ソフトの両面から整えた.これを我々のターゲットであるラプラス変換の実逆変換の計算アルゴリズム開発に適用し,今まで困難とされてきた非適切性の典型的な逆問題の難問と考えられてきたこの問題に対して,十分な精度で計算できることを実証した. (3)ラプラス実逆変換にシンク関数近似やフレドホルム第2種積分方程式の利用が有効であることを理論的,数値計算的に実証した.また,2重指数関数法が数値計算上,非常に有効であることを多くの数値計算で示すことができた. (4)ラプラス実逆変換に特異値分解が有効であることを理論的に示した.また,この計算には高精度数値計算(多倍長,無限精度)が必須であることを示し,この方法論と用いられる数値テーブルを確立し,京都大学と共同で特許申請を行った.これは両大学にとって,数学の分野では初めての特許申請であり,日本数学会でも注目されており,内外の逆問題の研究者からも問い合わせがある.
|