研究概要 |
集合A上の多変数関数の集合で,射影関数をすべて含み,合成の演算に関して閉じているものをA上のクローン(clone)という。集合A上のクローン全体の集合は束の構造をもつ。これをA上のクローン束といい,L_Aと表す。L_Aの構造は極めて複雑であり,まだほとんど何も解明されていない。 射影関数の全体をJ_Aと表すとき,J_AがL_Aの最小元であるが,L_AからJ_Aを除いた集合における極小元を極小クローン(minimal clone)という。極小クローンについては,|A|=2,3の場合を除き,散発的な結果が得られているに過ぎない。極小クローンは,1個の関数によって生成される。極小クローンを生成する関数を極小関数とよぶ。 本研究では,基礎の集合Aに有限体の構造を導入し,Aを有限体GF(|A|)とみなして,極小関数を有限体上の多項式として捉えるという新しい手法を用いて,極小クローンの分類に新局面を切り開くことを目的とした。3値の場合(|A|=3の場合)の極小クローンの分類はすでにB. Csakanyによって得られている。我々は3値の場合の極小関数を多項式の形で表現することから始め,それらのうちのいくつかを任意の有限体GF(k)上の極小関数に一般化する研究を行い,いくつかの成果を得た。 とくに,生成関数が2変数idempotent関数である場合と3変数majority関数である場合に注目し,極小関数が一次関数である場合,および,極小関数が単項式である場合について完全な分類を得た。さらに,これら以外にも,極小関数となる多項式の一般化の例を多数求めることに成功した。
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