研究概要 |
研究実施計画の役割分担に従って,下記の研究成果を得た. 1.貼り合わせルールにより構成されたペンローズタイリングに関して,新たなsubstitutionルールを一つ見つけた.それを用いることにより,非周期性,局所同型性,非可算性,貼り合わせルールにより構成されたペンローズタイリングがthe up-down generationで得られることの初等的な証明を与えることができた. 2.分子の立体構造を調べるために,n個の環状炭化水素分子の数理モデルを与え,その配置空間のトポロジーを研究した.数理モデルとして満たすべき条件を仮定すると,5以上のnに対して,n個の環状炭化水素分子の立体構造から成る配置空間はn-4次元の球面と微分同型であることが示される.この結果はnが5もしくは6のときの現実のn個の環状炭化水素分子の立体構造から成る配置空間の形がそれぞれ円周,2次元球面として現れることに説明を与えている. 3.アンダーソンモデルの固有値と固有関数の局在中心のなす点過程を考え,無限体積極限においてこれがポアソン点過程に収束することを示した. 4.一次元トーラスの任意の分割に対応する無理回転のコード化を調べた.そのようにして生じる数列は再帰再生構造をもち,その再生過程が停留的になるのは分割パラメータと初期値,回転数のすべてが同じ実二次体に属するときに限ることを証明した. 5.シフト基数系の境界に属する点が必ず準周期的な軌道と対応するかを2次元の場合で調べた.この中で注目すべきは黄金比の場合にはそのような現象が本当に起きていることである.この仕事は最近さらに離散回転のもつself-inducingな構造の研究に広がっている.
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