研究概要 |
1.解析学で有用なε-論法の代わりとなる新たな滑らかさの概念(漸近的Egoroff性)をRiesz空間に導入し,可測関数列の概一様収束に関するEgoroffの定理がRiesz空間値ファジィ測度に対して成立することを示した.また,多くの重要な数列空間や関数空間が漸近的Egoroff性をもつことを示した. 2.Riesz空間がEgoroff性を満たす場合は,Egoroffの定理が性質(S)を満たす強順序連続なRiesz空間値非加法的測度に対して成立することを示した.また,Egoroff性よりも弱い滑らかさの条件である弱σ-分配性を仮定した場合は,一様自己連続かつ強順序連続で下から連続な非加法的測度に対してEgoroffの定理が成立することを示した. 3.漸近的Egoroff性を精密化した多重Egoroff性をRiesz空間に仮定することにより,距離空間上の弱零加法的なRiesz空間値ファジィ測度はつねに正則となることを示した.応用として,Borel可測関数の連続関数列による近似に関するLusinの定理が,同種のファジィ測度に対して成立することを示した. 4.Riesz空間値非加法的測度に対するAlexandroffの定理が,Riesz空間が弱漸近的Egoroff性をもち,測度が自己連続の場合と,Riesz空間が弱σ-分配性をもち,測度が一様自己連続の場合に成立することを示した.応用として,Riesz空間が多重Egoroff性をもつ場合は,完備あるいは局所コンパクトな可分距離空間上の自己連続なRiesz空間値非加法的Borel測度に対して,そのRadon性と連続性は同値となることを示した. 5.Duchon,RiecanらによるRiesz空間におけるリーマン・スティルチェス積分論を用いて,Riesz空間値非加法的測度に対するショケ積分の概念を定式化し,共単調関数に対する積分の加法性などの基本的性質を調べた.
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