研究概要 |
惑星形成論において,サブミクロンサイズのダストから微惑星形成までの過程は最も不定性の大きい部分である.本研究では,成長したダストを微粒子の集合体として扱い,ダスト衝突の大規模数値計算を行うことにより、成長時の内部構造進化を調べた。 まず、衝突の大規模数値計算を行うためのコード作成をMD計算の手法にならい作成した。その結果、従来この分野で使われていたものに比べ計算時間を1/10程度に短縮することに成功した。この高速な数値コードを用いて大規模数値計算を行った。 我々のダストアグリゲイトの衝突数値計算結果によると,衝突による圧縮が進行した後も,フラクタル構造はある程度維持されることが明かになった.衝突でできたアグリゲイトのフラクタル次元は常に2.5程度で,この低いフラクタル次元のためダストの内部密度は比較的低く抑えられることになる.我々は,数値計算で得られた衝突エネルギーと圧縮後の密度の関係から,衝突時のアグリゲイトの実効的な強度を密度の関数として得た.この強度をもとにアグリゲイトの密度進化を議論することができる. さらに、アグリゲイトの連続衝突の数値計算を行い,合体成長していくアグリゲイトの密度進化の様子を明らかにした.また連続衝突の数値計算で得られるアグリゲイトにおいても、その構造のフラクタル次元は2.5になることが示された. 同様な連続衝突の数値計算を広いパラメータ範囲に行うことで、その結果から成長するダストの内部密度進化を記述する方程式を導出した.この式を用いることで、任意の衝突合体成長過程におけるダスト密度進化の様子を知ることができる。この方程式によると、我々の太陽系を形成した場ではメータサイズまで成長したダストは1万分の1g/cm3という超低密度をもつことになる.このような超低密度ダストの存在は、惑星形成理論における微惑星形成過程の描像を大きく変えるであろう.
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