研究概要 |
クロムカルコゲナイドの物性は組成比に依存することがわかっており、Cr_xY(Y=S,Se,Te)は転移点において構造相転移を起こす。また、帯磁率や電気伝導度の測定からCrSとCrSeについては半導体-金属転移がおこるといわれている。これらの諸性質はフェルミ準位近傍の電子状態によるものと考えられる。CrS,CrSe,Cr_xTeについては状態密度が計算されている。本研究ではこの系の電子状態を明らかにし、カルコゲン及び原子空孔の効果について調べるとともに、バンド計算によって得られた状態密度と比較検討を行った。 Cr_xYの非占有状態におけるCr 3p-3d共鳴逆光電子分光実験を行い、伝導帯におけるCr 3d部分状態密度を得た。これらを比較した結果、Cr_xSe,Cr_xTeについては価電子帯の状態密度と同様に、クロムサイトの空孔に依存しないことがわかった。Cr_xSについては現在測定中である。また、カルコゲンの違いでは、カルコゲンがS→S→Teになるに従って交換分裂エネルギーは大きくなり、バンド計算と同じ傾向になっていることがわかった。しかし、交換分裂エネルギーの数値は実験値の方が大きくなっている。 CrSの試料においては半導体-金属転移が報告されていることから、高分解能極低温光電子分光実験により低温相におけるフェルミ準位近傍の電子状態を調べた。この結果、温度が低くなるに従って、フェルミ準位付近の強度が低くなっていることがわかった。しかし、スペクトル中に温度変化とともに変化をする構造が見つかり、再度測定を行なう予定である。 (Cr_xV_<1-x>)_3Te_4についてはすでに単結晶をつくり、測定待ちの状態である。 これらの実験は広島大学放射光科学研究センターに設置された放射光ビームラインBL-9,BL-7およびRIPES装置を使って行なった。
|