研究課題/領域番号 |
18540374
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
数理物理・物性基礎
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
川村 光 大阪大学, 大学院・理学研究科, 教授 (30153018)
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研究期間 (年度) |
2006 – 2007
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研究課題ステータス |
完了 (2007年度)
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配分額 *注記 |
3,800千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 300千円)
2007年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2006年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
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キーワード | フラストレーション / パイロクロア / スピングラス / モンテカルロシミュレーション / カイラリティ / カイラルグラス |
研究概要 |
幾何学的フラストレート磁性体の典型であるパイロクア磁性体を主たる対象とした研究を進め、1)2次元3角格子ハイゼンベルグ反強磁性体のボルテックス秩序の解明、2)強磁性的次近接相互作用を持ったハイゼンベルグ型パイロクロア反強磁性体における新奇な秩序化現象、および、3)RKKY長距離相互作用を有する3次元イジング型パイロクロア反強磁性体の磁気秩序化現象、の3つのテーマにおいて大きな成果を得た。1)については、大規模数値シミュレーションにより、渦度モデュラスや相関長、相関時間を大きなサイズの系まで直接計算し、この系のボルテックス秩序化について詳細な情報を得ることに成功した。特に渦度モデュラスの解析に基づき系のボルテックス転移温度を決定、転移温度以下でも相関長や相関時間は有限にとどまり、トポロジカル秩序相は大きな揺らぎを伴った特異な状態-"スピンゲル状態"-となっていることを明らかにした。2)については、モンテカルロシミュレーションに基づいた数値的研究によりにより、この系が特異な秩序状態へ1次の相転移を起こすことを確立した。低温相でのスピン秩序は非整合の波数で特徴付けられ、スピン構造因子に鋭いピークを伴うものの、スピン自体はなお大きく揺らいだ特異な状態であることを明らかにした。また3)のイジング型パイロクロア反強磁性体の秩序化の問題は、氷のプロトン秩序化と残留エントロピー問題-所謂「スピンアイス」問題-とのアナロジーもあり、また最近イジング型金属パイロクロア磁性体Pr_2Ir_2O_7において低温で極めて興味深い振る舞いが実験的に見出されたことからも、大きな注目を集めている問題である。Pr_2Ir_2O_7の場合、金属であることを反映して、主たるスピン間相互作用がRKKY長距離型相互作用になっている。本研究では、RKKY相互作用を有するパイロクロア格子上の<111>イジングモデルの磁気秩序化を、相互作用の長距離性をより厳密に取り入れるべくEwald sumの手法を用いたモンテカルロシミュレーションにより解析した。その結果、フェルミ波数に対応したパラメータ値により多様な秩序化現象を観測した。特にPr_2Ir_2O_7の実験値に近いパラメータ値の場合、反強磁性的なキュリーワイス定数を持ちながら低温での短距離秩序は強磁性的な"2-in 2-out"構造を取ること、有限温度で系は波数(0,0,1)で特徴付けられる長距離秩序状態へと1次の相転移を示すこと、(111)方向に磁場を印加すると飽和磁化の3/8の所に磁化プラトーが出現すること等を新たに見出し、最近のPr_2Ir_2O_7に関する実験結果と比較検討した
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