研究課題
基盤研究(C)
原子や分子に捕獲されている電子が感じるポテンシャルエネルギーに局所的な井戸があり外部と薄い障壁で隔てられている場合、井戸内部には束縛状態が生成される。外部領域から運動エネルギーを持った電子が衝突、あるいは電子が基底状態から光励起された際、その(運動/励起)エネルギーが束縛状態の固有エネルギーに一致した場合、電子がこの状態に捕獲される確率は共鳴的に増大する。捕獲された電子はトンネル効果により障壁を透過するため、この状態は短寿命の擬束縛状態であり共鳴状態と呼ばれる。本研究では、高磁場や高電場により新奇な共鳴状態を作る試みを、世界で初めて分子を使用して行った。NO分子に最高10Tの高磁場を印加しポテンシャル障壁を生成し、障壁内の擬束縛状態(ランダウ準位)に電子を光励起した。ランダウ準位に一時的に捕獲された電子の運動は、古典的にはサイクロトロン運動に対応する。磁場と平行方向にはこの障壁の高さが零であるため、トンネル効果ではなく、同方向への電子の放出(電離)により緩和するのがこの共鳴状態の特徴である。生成されたNOイオンの量を励起光エネルギーの関数として測定して、ランダウ準位の存在を確認した。最高8.3kV/cmの電場をNO分子に印加し、核と低電位側との間にポテンシャル障壁を生成した。得られた共鳴状態(シュタルク共鳴)に電子を光励起した。核から障壁に向かって運動する電子は障壁に反跳され、核に再び接近し散乱される。障壁方向に散乱された電子は同様の運動を繰り返し共鳴状態が持続されるが、高電位側に散乱された電子は電離する。この電離過程を経て生成されたNOイオンを、先と同様に測定してシュタルク共鳴状態の存在を確認した。シュタルク共鳴状態は原子で数件報告例があるだけで、分子で観測したのは世界初の快挙である。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (3件)
European Physical Journal D 38
ページ: 203-203
ページ: 175-175
Langmuir 22
ページ: 7600-7600