研究概要 |
海溝付近で起こる地震の予測・予知のためには、繰り返し地震を発生している領域であるアスペリティを明らかにする必要がある。精度のよくアスペリティを明らかにするためには、震源域近傍での記録が必要であるが、従来の自己浮上式海底地震計は高感度観測のために設計されており、大きな地震の際には,記録が飽和してしまい、アスペリティの研究には不向きである。近年、小型でダイナミックレンジが広い低消費電力の加速度計が利用可能になっている一方、自己浮上式海底地震計は、耐圧容器にチタン製球容器を使用することになり、内蔵可能な電池容量が格段に大きくできるようになった。現在,海底で大振幅の加速度記録を得ることができる自己浮上式海底強震計が申請者により開発されたが、高度な解析を行うため、現在の海底強震計を高度化させる必要がある。本研究は、海溝付近で起こる地震のアスペリティ解明(震源過程研究)のために、1G程度までの加速度でも飽和しない記録を得る自己浮上式海底強震計を高度化し、高度な解析に耐える記録を得る実用的な海底強震計を開発するものである。特に多種類の地震計センサーを搭載し、記録のダイナミックレンジを広げ、多様な解析が行える記録を得ることを目的とする。なお、収録は連続収録とし、1年以上の観測ができることを目標とする。平成18年度に開発・高度化した海底強震計5台は、平成18年度9月に実際に海底に設置した。試験観測の対象域は、現在地震研究所が長期観測を継続して行っている茨城沖である。平成19年10月に全台を回収することができ、高感度地震計と低感度加速度計の同時記録が得られた。これにより、複数センサーを搭載する海底強震計の基本技術はほぼ確立された。
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