研究概要 |
赤熱ルミネセンスを用いて東北日本の段丘堆積物の年代測定を石英1粒子から行った.微弱であるシグナルを検出するため,測定装置に対してフォトマルの改善と石英パイプによる集光システムの改善を施した.その結果約20%程度の感度上昇が図られた.石英の赤熱ルミネセンスは太陽光に対して強い抵抗性を持つことが知られ,約30時間の太陽光照射実験では太陽光未試料に対し約40%の残余率を持つことが明らかとなった.これを解決するためこれまでの手法では,見かけ蓄積線量(Ap-De)と残余レベル(RI)をそれぞれ別のアリコット(試料皿)で測定が行われた.しかし,異なる2試料を用いて測定が行われるため,測定データを対等に評価できない欠点がある.そこで,新手法,単粒子分割法を考案した.この手法では単粒子をハンマーと釘で分割し,それぞれの分割片からAp-DeとRIを測定する.この手法を用いると1粒子からAp-DeとRIを得ることができる大きな利点がある.400ミクロンサイズの石英を用いた実験では,最少の赤ルミネセンスシグナルから,約20Gyの線量を測定することに成功した.2種類の段丘堆積物を用いて,新手法から実効的な測定を行うことができた.単アリコット再現法(SAR)で測定された最少蓄積線量と残余レベル蓄積線量用いて評価された年代は,それぞれ241±20kaと113ka±17kaであった.この年代は地質学的な情報から推定される時代,OIS7およびOIS5eとよく一致する.実験手順は複雑であるが,この手法は実用的に採用できることが明らかとなった.
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