研究概要 |
福島県海岸部の陸域に分布する鮮新統の研究から,鮮新世後期の3.5Maから2Maへ向かい寒冷化が進行する際の陸棚環境の変遷を堆積相,有機炭素量,有機物組成の研究から明らかにした.さらに,これらの分析に珪藻化石による古環境解析を加えた結果,鮮新世温暖期から更新世寒冷期へ数10万年周期で変動しながら,移り変わっていくことが陸棚堆積物に記録されていることを明らかにした.すなわち,約20〜40万年周期の世界的な気候変動を反映した研究地域北方のデルタの前進・後退によって,研究地域では外側陸棚から内側陸棚へと堆積環境が変化し,温暖期と寒冷期では有機物の起源と運搬保存作用に異なった特徴が認められた. 一方,大年寺層に見られる巨大海底谷はこの寒冷化の最盛期に形成されていることが,既存の生層序研究より,わかっている.このように,2.7Ma頃に開始される寒冷化が急速な海水準低下を招き,それが海底谷形成関連するかもしれない.海底谷基底のブロックとそれを覆う砂岩層は,薄層細粒砂岩層を挟在するシルト岩層に覆われる.これは,2.5Ma頃の温暖期に対応され,チャネルの形成とデルタフロントの前進によるスランプ層の形成は,その後2.3Ma頃から2.1Maにかけての寒冷化に対比させることが出来るかもしれない。 このように鮮新世末に始まった寒冷化が陸棚の堆積作用と海底谷形成に強く影響していた可能性がある.
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