研究概要 |
本研究は,砂粒子以下の細粒堆積物の粒子配列を示すとされる帯磁率異方性(AMS)を決定する要因を,薄片の自動画像解析法やX線CT法との比較から明らかにすることを目的とした. 平成18年度は,平行葉理中の粒子配列を3つの方法で比較し,砂床上昇速度が平行葉理の形成および粒子配列に与える影響を明らかにした.プレーンベッド形成領域で砂床上昇速度を変化させると,砂床上昇速度の増加に伴って平行葉理の幅が増加し,シャープな葉理境界が漸移的な境界へと変化する.X線CT法で得られた3次元の粒子データを扱うために,粒子の形と向きを同時に扱う5次元クラスター解析を新たに開発した.その結果,給砂量が粒子の形と向きの組み合わせに影響を及ぼしていることがわかった.さらに同じサンプルについて薄片の自動画像解析法とAMS測定を行った結果,ほぼ同じインブリケーション角が得られる事がわかった. 平成19年度なAMSを担う鉱物についてさらに詳しく検討した.水路実験でよく使われる豊浦珪砂を磁性の強さによって分離し,それぞれの組成ならびに磁気特性を調べた結果,豊浦珪砂には石英,斜長石,カリ長石,角閃石,ガーネット,ルチル,黒雲母,イルメナイト,マグネタイトが含まれている事がわかった.磁性を担う鉱物としては,イルメナイトが圧倒的に多い.鉱物の化学組成と密度からそれぞれのX線線吸収係数の理論値を求め,X線CT画像上で磁性鉱物と磁性を持たない鉱物を分離することができた.その結果得られた粒子配列を薄片やAMSと比較した.沈降実験の解析結果は,AMSが示すインプリケーション角は粒子全体よりむしろ磁性鉱物の長軸分布により近い値を示した.粒子流実験の解析結果は3つの方法から得られるインプリケーション角にばらつきがみられた.この原因として今回のサンプルが粒子流堆積物内の粒子の分布の偏りを反映する大きさであった事が考えられる.
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