研究概要 |
本研究の最大の目的は,様々な堆積物中に微量に含まれているグレイガイトを同定するために,熱磁気的特徴を明らかにすることであった.なぜなら,グレイガイトは先行研究ではキュリー点が320℃前後と報告されている例が多いにもかかわらず,グレイガイトを含む堆積物の自然残留磁化が400℃近くまで安定に存在するという矛盾した報告も多いからである.そこで,本研究では純度,量等の点で実験に適している台湾南部二仁漢産のグレイガイトを用いて,系統的な岩石磁気学的およびX線回折法による研究を行った. 熱磁気分析で加熱した後の試料のX線回折結果によれば,グレイガイトは340℃までは加熱した後でも磁気的に検出できるが,それ以上に加熱すると検出されなくなることがはっきりした.しかし,高温X線回折装置を用いて,ヘリウム雰囲気で加熱しながらX線回折を行うと,グレイガイトは380℃まで存在することが確認された.また,340℃以上ではピロータイト,パイライト,マーカサイトが出現し,さらに380℃以上ではヘマタイトも出現することが分かった.他の実験結果なども合わせて考えると,グレイガイトは晶出時に獲得した磁化を380℃くらいまで保持している可能性が高く,このことはこれまでの研究で,グレイガイトを含む堆積物の自然残留磁化が400℃近くまで保持されているのではないかという解釈と矛盾しない.しかし,340℃以上では,加熱によってさまざまな鉱物が生成されるために,それらの一部が磁化を引き継いでいる可能性もありそうである. 本研究によって,試料の純度によって実験結果が大きく異なることも分かり,試料の差による再現性を確認しなければならないことも分かった.そのため,今後さらに継続して研究を行う必要性があると考えている.
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