研究概要 |
強磁場下,液相で磁性水和イオンは磁気力によって移動する。このとき,水和イオンは単独でなく,多数の水和イオンから成る大きな集団を形成して運動する。本研究の目的は,この水和イオン集団の移動を強磁場下で観測することによって,水和イオン集団のサイズと構造を解明することである。 問題を,水和イオン集団の磁気移動と,水和イオン個別の熱拡散に分けて考察する。 まず,水和イオン集団の磁気移動に対しては,水和イオン集団を球体に近似して,周囲のバルク水分子の中で磁気力と摩擦力が釣り合って,水和イオン集団が終末速度で一方向(1次元的)に移動すると仮定した。 次に,水和イオン個別の熱拡散に対しては,熱攪乱によって個別磁性イオンが平面内(2次元的)に拡散して,水和イオン集団内部で個別磁性イオン間の間隔(距離)が拡大する点を考慮した。 こうして,水和イオン集団の強磁場下における移動距離の時間変化と,熱攪乱による拡散距離の時間変化を測定して,これらの実測値をシミュレーション計算で再現することを試みた。 現在までに,水和イオン集団のサイズとして,直径4.6μmの見積もりを得ている。水和イオン集団は,そのサイズが極めて大きいことに驚かされる。一方,水和イオン集団を流体と考えて,水和イオン流体がバルク水分子の中を流れると仮定すると,移動速度の計算値は実験値を20倍も上回る結果になる。
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