研究概要 |
様々なサイズのCdTe量子ドットを有機溶媒中および水中でコロイド合成法により合成すると共に,短波長励起で障害となる前駆体を取り除いた。まず,定常光による発光スペクトルの励起波長依存性を測定し,量子ドットの固有スペクトルが励起波長に依存せず短波長励起の発光ダイナミクスが不純物等によるものではない事を明らかにした。また,逆オージェ効果を解析するためにTi:Sapphireレーザーの第二,第三高調波で励起し発光寿命測定を行い,そのダイナミクスを比較した。 その結果,粒径(バンドギャップエネルギーEg)の異なるCdTe量子ドットを用いた場合,hω/Egの値が約2.5以上になった場合に発光寿命が早くなり,複数キャリアの生成を伴う逆オージェ効果が起こる事が明らかになった。粒径5.4nm(Eg=1.73eV)のCdTe量子ドットの場合は,逆オージェ効果の量子効率は190%になった。また,CdTe量子ドットの逆オージェ効果の閾値2.5Egは,電子と正孔の有効質量が重要な役割を果たしている事が示唆された。 逆オージェ効果で生成した複数キャリア間の相互作用を明らかにするために,過渡吸収ダイナミクスの励起光強度依存性からオージェ効果の解析も行った。CdTe量子ドットとCdTeナノワイヤのオージェ効果は,励起子間の相互作用に関して時間に依存する速度定数を用いる事によりGlobal解析できること,ナノワイヤの方がオージェ再結合定数が大きいこと,等をはじめて示した。さらにCdTe量子ドットの単一微粒子分光においても,励起光強度依存性からオージェ効果によるイオン化が発光明滅現象に支配的な役割を果たしていることを明らかにした。
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