研究課題
基盤研究(C)
テトラベンゾポルフィリン(TBP)及びフタロシアニン(Pc)は、平面性の高い有機半導体であり、これまでに真空蒸着によって各種の電子デバイスに応用されてきた。我々は、これら顔料の薄膜を真空を使わず塗布によって作成する研究に取り組んできた。ビシクロ[2.2.2}オクタジエン(BCOD)で縮環したポルフィリンは、加熱により定量的にTBPに変換できることを見出していたので、このBCOD縮環ポルフィリンのクロロホルム溶液をスピンコートして薄膜を作成し、熱反応によりTBPの薄膜の作成に成功した。この方法により、TBPを半導体とした電界効果型トランジスタ(FET)や太陽電池のデバイスを塗布により作成可能になった。BCOD縮環ポルフィリンは、塩素系溶媒には可溶であるが、炭化水素系溶媒には、難溶である。そこで、より溶解性が向上した前駆体として、BCOD環にジメチル基を導入したポルフィリンを合成した。このポルフィリンは、優れた溶解性を示し、塗布によるTBP薄膜の優れた前駆体であることが分かった。次にPcの可溶な前駆体の合成とそれを利用した塗布によるPc薄膜の作成を検討した。ポルフィリン合成と比較して、Pc前駆体の合成は、100℃以上の温度が必要なので、環化の反応中に熱反応により、Pcが生成するために困難である。この困難を克服するために、逆Diels-Alder反応の高いビシクロ環を用いて、Pcの可溶な前駆体の合成に成功した。この前駆体を用いて、塗布により有機FETのデバイス作成に成功した。また、同様にナフタロシアニン(Nc)の可溶な前駆体の合成にも成功し、塗布により、Ncを半導体としたFETの作成に成功した。本研究により、Pc及びNc半導体の太陽電池が塗布で作成できる可能性が開かれた。
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