研究概要 |
本研究計画の目的は,メゾスコッピクなサイズを持つ縮合モリブデン酸イオン(ナノサイズモリブデン酸クラスター,{Mo_x})の酸素架橋によるネットワーク化によって形成されるナノクラスター・ネットワーク(ナノネット)を利用した量子化機能素子の開発を目指した基礎的研究の実施である.本研究計画に従って,{Mo_<36>}を組上げて形成されるナノネットの結晶体(集積体)を用いた量子化機能素子の開発を目指して,{Mo_<36>}ナノネットのトポロジー({Mo_<36>}の配列と連結様式)の制御,ナノネット周りのマトリックス(有機分子リンカー層)の層厚の制御,{Mo_<36>}ナノネットの電子物性の制御などの研究を行った. 本研究計画により,α,ω-アルカンジアミンへのOH基の導入(リンカー間の相互作用の導入)や,マルチアミンの使用によって{Mo_<36>}間の連結様式や{Mo_<36>}のパッキング様式の異なる2次元のMo-0フレームワークをもつ種々のナノネット結晶体の合成に成功した.また,混合方法やリンカーとして用いるジアミンの組み合わせを工夫し,2種のα,ω-アルカンジアミンをリンカーとする[{Mo_<36>}-混合ジアミン]の系で1次元のMo-0フレームワークをもつ構造体を新たに合成することにも成功した.これらは,種々の層厚のマトリックス(有機分子リンカー層)をもつナノネットの結晶体の合成法と多様なナノネットの構築法の開発を意味する.更に常温での水素還元によりナノネットへ電子を付与できることも確認された.現在,ナノネットの結晶体を安定に溶液から取り出す方法を検討しており,穏やか結晶水の脱離条件下での0次元の構造から,1次元ナノネット経て,2次元ナノネットへ変換される現象も新たに見出された.
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