研究概要 |
トリス(2,2'-ビピリジン)ルテニウム(III)錯体(以下Ru錯体)と種々の化合物の発光反応について検討した。複素5員環芳香族化合物が強い発光を与え,芳香環のπ電子密度が高いほど強い発光を示した。カルボキシル基をα位に持つ脂肪族第二級アミンが非常に強い発光を示した。Ru錯体と2,5-ジメチルチオフェンの発光反応について詳細に検討したところ,2:1で反応し,反応生成物は5-メチル-2-チオフェンカルバルデヒドであることが分かった。発光強度と酸化電位の同時測定およびチオフェン誘導体の酸化反応に関する文献から,プロトンの放出を伴う発光反応機構が推定された。また,様々な病気のバイオマーカーとして用いられている血中イミノ酸の高感度同時分析法を開発した。60分以内で4種類のイミノ酸の分析が可能であった。 Ru錯体電気化学発光イムノアッセイのための予備的検討を行ったところ,N,N-ジプロピル-L-アラニンは,これまで広範に用いられているトリプロピルアミンに感度面で匹敵し,常温で固体,水溶液が中性であるなど,より利用しやすい有用な還元剤であることが示唆された。(2,4,5-Trimethyl-3-thienyl)acetic acidをRu錯体発光検出用誘導体化試薬として合成した。この誘導体化試薬を用いて13種類のアルキルフェノールおよびビスフェノールAの混合溶液をHPLCで測定したところ,ppbレベルの検出が可能であった。環境水中のリン酸イオンの高感度分析法を開発した。硫酸溶液中でモリブデン酸イオンと反応して生成するモリブドリン酸錯体と脂肪族第三アミンとの間でイオン対を生成させ,イオン対に含まれる脂肪族第三アミンをRu錯体化学発光法で測定することで間接的にリン酸イオンを定量した。
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