研究概要 |
超臨界水反応観察セルに,水性二相系溶液の導入システムを組み込み,さらに攪拌と分取の機能を付加して高温高圧水性二相抽出システムを構築した。ポリエチレングリコール(PEG)-硫酸ナトリウム水性二相系におけるアルコール,ケトン,ニトロアルカンの分配に及ぼす塩濃度の効果を検討し,各有機化合物の分配係数が溶質と高分子溶液相との相互作用および塩斥効果の関数として表すことができることを示した。また,高分子溶液相への分配係数を推算し,その値がPEGゲル粒子を充填したカラムを用いる液体クロマトグラフィーにより得られる分配係数とよく一致することを明らかにするとともに,示差熱分析により得られた結果から,水性二相抽出における分離選択性は特定の水和構造を持つPEG相への分配によるものであることを示した。さらに,アルコールとケトンをモデル化合物として,分配係数の温度依存性を25-100℃の範囲で調べ,相間移動自由エネルギー△Gを求めて抽出機構の解析を試みた。その結果,水性二相抽出においては温度を変化させることによって分配係数を大きく変化させ,分離を制御できることが明らかになった。 一方,高分子の疎水部と水分子の相互作用,ならびに分離選択性への寄与を明らかにすることを目的として,アルキル化学結合型シリカゲルを用いた逆相液体クロマトグラフィーにおけるイオンの保持挙動を,独自に開発した移動相体積測定法を駆使して検討した。その結果,アルキル結合層表面にはバルクの水とは異なる溶質親和性を持つ水の層が形成され,その水が分離媒体として機能していることを明らかにした。
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