研究概要 |
分子システムの基盤化合物である1,2-ビス(n-アルコキシベンゾイル)ヒドラジン(BABH-n)のアルキル鎖炭素数nが4から22までの同族体を合成し、相転移挙動や液晶相のミクロ構造の詳細を明らかにするとともに、アルコキシアゾベンゼンとの2成分系を調製し、光による相転移制御を目指した。主な成果を以下に示す。 1. 長鎖化にともない、キュービック(Cub)相の構造は、Ia3d型、Im3m型、そして再びIa3d型へと変化した。この結果は4'-n-アルコキシ-3'-ニトロビフェニル-4-カルボン酸に見られた鎖長依存性と同じであり、硬い芳香環のコア部分の両端から1本ずつアルキル鎖をもつ化合物系に特有であることがわかった。 2. X線回折とIRスペクトルの測定によりCub相のミクロ構造の検討を行った。(1)構造形成駆動力は、コア部分とアルキル鎖部分のミクロ相分離、アルキル鎖の広がり、分子間水素結合であることを明らかにした。(2)短鎖側、長鎖側のいずれのIa3d型Cub相において、アルキル鎖末端がG型の三重周期極小界面上にあることを明らかにした。(3)構造形成の特徴から、系は長鎖化にともない低分子液晶様領域からブロック共重合体様領域へと移行しており、その中間領域にサーモトロピック系特有のIm3m型が発現している。(4)n=13,15,16では、Ia3d型とIm3m型の間で温度誘起のCub-Cub相転移を示す。時分割X線回折測定により、相転移のダイナミクスを明らかにしつつある。 3. 光による相転移制御では、アルキル鎖炭素数が8から10のアルコキシアゾベンゼンとBABH-nの2成分系の調製を行い、SmC相とCub相の両方が安定に発現する系の探索を行った。そのひとつの組合せで、紫外光の照射により3次元積層構造であるCub相から1次元積層構造であるSmC相への可逆のスイッチングが実現できた。
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