研究概要 |
本申請者は新しい概念に基づく新しい電子系の創出とそれらによる画期的機能の創出が重要であるとの観点から、ドナー、アクセプター基を機能的に配列させたクロス型電子共役系強発光物質の創製について、それらの合成法および機能評価について検討する事を目的とした。 2,3,5,6-4置換ベンゼンをコアとして、4方向にフェニルエチニル基をアーム状に構築し、ドナーあるいはアクセプター基を修飾したπ共役体を合成し、その発光特性について研究した。その結果、HOMO-LUMO gapおよびHOMOとLUMO係数の分布およびINDO/sによる基底状態および励起状態での電荷分布等の計算から、ロッドおよびスター型よりもクロス型の方が電子共役系の拡大に有利に働くことを見いだした。さらに、2,3,5,6-4置換ベンゼンをコアとして、4方向にフェニルエチニル基をアーム状に溝築し、ドナーあるいはアクセプター基を修飾したπ共役体を合成し、その発光特性について研究した結果、いずれも親化合物(Φ_F=0.53)よりも高い量子収率(Φ_F=0.9)を得る事に成功した。クロス型フェニルエチニルベンゼンはπ-電子の拡張を大きくさせ、ドナー・アクセプター基を導入する事で励起状態においてπ-電子の広がりをさらに大きくさせている。この事は、無放射を抑え放射を有利にする事によりその量子収率は大きく増大したものと思われる。△△S^‡=△S_r^‡-△S_d^‡=ln k_r/k_dの取り扱いから、発光効率のエントロピー依存性を世界で初めて見出すことが出来た。また、励起状態でのπ-電子の分極はコア、アーム部分で起こるが分子全体として対称性のためそのモーメントは小さくなり励起状態での溶媒和を受けにくい事が明らかになった。
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