研究課題
基盤研究(C)
本研究の対象物質RFe_2O_4(R : 希土類) のうち、誘電性の知られていないYbFe_2O_4の物性を測定し、論文で報告した。鉄スピンの磁気転移温度は250K付近で、他のRfe_2O_4と近い。また、誘電率は室温で10000程度であり、含まれる希土類が比較的安価なYbであるため、応用に有利である。また、LuFe_2O_4につき、作成条件を変えながら多結晶を作成し、最も良質な試料が得られる条件を探索した。現在、磁化測定を行っており、最適条件が求まりつつある。また、物性報告例の少ないRFe_2O_4の鉄サイト置換体の研究も行い、RFe_2O_4,RFeCoO_4,RFeCuO_4,RGaCuO_4の順に誘電率が下がることを見出した。磁性測定の結果と合わせ、この傾向を鉄サイトの電子移動と関連付けて説明した。すなわち、RFe_2O_4およびそれと同構造物質の誘電性は、よく知られているイオン変位機構とは別の機構で起こっていることが示唆された。なお、RFeCoO_4は、誘電率が1000程度と比較的高く、空気中で簡便に合成されることから、応用に有望と提言した。電子移動が重要と考えられる誘電性は、マンガンやルテニウムを含む酸化物においても観測した。特に、希土類-マンガン酸化物R_0.5Ca_0.5MnO_3において、誘電ドメインの反転エネルギーと、マンガン3d電子の移動に必要な活性化エネルギーが近いことなどを報告した。この結果は、誘電応答とマンガン電子の移動が密接に関連していることを強く示唆する。さらに、以上の系の特徴として、誘電応答と格子との結合が弱いことを見出した。このことは、格子歪みによる結晶の劣化が少ないことを意味し、長寿命な素子の開発が行える可能性を示す。
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