研究概要 |
核酸(DNA)に対する選択吸着能をもつ新規吸着剤の開発を目的とし,種々のポリカチオン固定化セルロース球状粒子を調製した。得られた高分子吸着剤は以下のような特長を示した。 (1)ポリ(ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)(PDAPA)をリガンドとしたPDAPA-セルロース粒子(細孔径M_<lim>2×10^3)は,バッチ法により、pH7.0,幅広いイオン強度域(μ=0.2〜0.8)でDNAを選択吸着できた。タンパク質回収率は、96%以上であり、DNA吸着率は99%であった。 (2)ポリアリルアミンおよびポリエチレンイミンをリガンドとした吸着剤は、幅広いイオン強度域で高いDNA吸着能を維持できたが、タンパク質(アルブミンおよびγ-グロブリン)も同時に吸着(10〜20%)してしまい、DNA選択吸着能がやや劣るという結果が得られた。 (3)1.7mLのPDAPA-セルロース粒子(細孔径M_<lim>2×10^3)を充填したカラムを用いて、γ-グロブリンとサケ精巣由来DNAとの混合液(γ-グロブリン:1mg/mL,DNA:10μg/mL,pH7,イオン強度域μ=0.2)からのDNAの選択除去を試みた結果、60mLのDNAを含むγ-グロブリン溶液からDNAのみを除去することができた。カラム処理後の溶液中のγ-グロブリン回収率は98%、DNA濃度は10ng/mL以下であった。 (4)(1)〜(3)の結果より、リガンドのカチオン性・疎水性・配向性、および基体の細孔径を制御することにより、生体環境に近い緩衝液中で、種々のタンパク質水溶液に混在するDNAを選択除去可能な吸着剤カラムが開発できた。
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