研究概要 |
書き換え可能型光ディスクDVDの性能が日進月歩であるが,「DVDの記録密度はどこまで高められるか?」という疑問に答えようとしたのが,本研究の目的である.記録密度はマーク径を小さくすればするほど大きく出来るので,本研究の目的を「相変化マーク径はどれほど小さくできるか?」に解答することと言い換えることもできる.ちなみに,現時点で商品化されている機器での最小マーク径は150nmと言われているが,これは記録に用いるレーザー光の波長で制限されたもので,Ge_2Sb_2Te_5記録膜自体はもっと小さなマークを保持できると予想された. 私は,光波長による制限をのりこえて小さなマークをつくるために,電気相変化を用いることを思いついた.電気相変化なら,電極を小さくすれば,小さなマークを書けると想像したからである.さらに,小さな電極として,走査型トンネル顕微鏡STMや走査型原子間力顕微鏡AFMの探針を使うことを考えた.このような顕微鏡を用いた実験なら,クリーンルームのない大学の実験室でも,極限的な特性を調べることができると期待した. 実験の結果,最小マーク径は10nm程度であることがわかった.面白いことに,アモルファスGe_2Sb_2Te_5膜に結晶マークを書いたときも,結晶Ge_2Sb_2Te_5膜にアモルファスマークを書いた(現行DVDの方式)ときも,最小マーク径は10nm程度となった.したがって,将来の相変化メモリーの記録密度は1層あたり1TBを凌駕しうると予測できる. 以上の実験結果の原因を探った.その結果,結晶マークの最小径は熱力学的に理解できること,一方,アモルファスマークの最小径は結晶Ge_2Sb_2Te_5膜の結晶粒径で支配されていること,がわかった. さらに,電気相変化の研究から,Ge_2Sb_2Te_5膜の不安定性を指摘することができた.自己加熱型電気相変化メモリー(P-RAM)では新奇な材料開発が必要と思われる.
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