研究概要 |
2次元フォトニック結晶(PC)導波路を用いた光集積回路の構築では,曲がり・分波・合波・交差などの非直線部分の反射を抑え,広帯域・平坦な透過特性が望まれる.トポロジー最適化(TO)法は,所望の特性を得るように,設計領域の屈折率分布を最適化する自動設計手法である.この手法により,位置,寸法,形状だけでなくトポロジー変化も含む大自由度の設計が可能となり,低損失で平坦・広帯域な透過特性を実現するという高度な要求にも応えることができる. 本研究では,光回路の大規模集積化を念頭において,低伝搬損失が可能なエアブリッジ型PCスラブ導波路に対してTO法を適用した.特に, PC光回路を構成する基本要素である交差導波路,曲がり導波路,方向性結合器およびY分岐導波路に対してTO設計を行い,広帯域化・低損失化・高機能化など導波特性の改善を試みた.また,半導体微細加工技術を用いた試作および光学測定によりTO設計の有効性を検証した. PCスラブ導波路にTO法を適用することで, (1)広帯域で高透過率・低クロストークの交差導波路, (2)直線と同等の透過特性を有する急峻な曲がり導波路, (3)広帯域で良好な結合特性を有する方向性結合器 (4)波長選択性を有するY分岐導波路が可能であることを実証した.本研究の成果であるPCスラブ導波路の高性能化は,対称マッハツェンダー型フォトニック結晶光スイッチなどの全光デバイスだけでなく,光フリップフロップや光論理デバイスなどの光集積回路を含む全光型デジタル信号処理システムの発展に寄与するものと期待される.
|