研究概要 |
本研究では超精密位置決めシステムのための多機能静圧継ぎ手を提案している.提案された静圧継ぎ手は,組み込まれている静圧軸受が能動制御されることを特色とし,この継ぎ手を採用した位置決めシステムには次のような機能が備わる. ○駆動機構の振動が位置決めテーブルに伝わりにくい:位置決めシステムの駆動機構であるツイストローラ摩擦駆動装置から生じるマイクロメートルオーダの振幅の横方向振動は,静圧継ぎ手を介して接続される位置決めテーブルにはほとんど伝動せず,テーブル運動精度が向上することを実験的に確認した. ○位置決めテーブルの位置決め方向剛性を向上させられる:静圧継ぎ手の採用によりテーブル運動精度は向上するが,送り方向剛性が低下する.そこで継ぎ手に組み込まれた静圧軸受の能動制御をおこなうことで送り方向剛性を向上させる.実験により,静的負荷に対する剛性(静剛性)は無限大にできること,動的負荷については振動数10Hz程度までは能動制御の効果により動剛性の向上することを確かめた. ○位置決めテーブルを高分解能で位置決めできる:静圧継ぎ手内の静圧軸受を能動制御することで短ストロークの微動位置決めを行うこともできる.ステップ位置決め実験の結果,1nm,0.5nm,100pm,50pmのステップが識別可能であった.このことより,能動型静圧継ぎ手の位置決め装置としての分解能は少なくとも50pmであることを明らかにした.さらに,μrad以下の微小角度ステップでの回転・姿勢制御も可能であることを確認した. 以上により、この能動型静圧継ぎ手は超精密位置決め技術として有効であり,本研究の成果は超精密工作機械の性能向上に役立つとともに,今後の超LSIや精密光学素子などの製造,あるいは基礎物理学の研究や新素材開発,さらにはマイクロメカニズムの実用化などに資するものであると考えられる.
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