研究概要 |
本研究では,複合加工機の送り運動に伴う熱変位特性の総合的高能率評価法を確立することを目的とし,以下の検討を行ってそれぞれに知見および成果を得た. 1.旋盤ベースの構造形態を有した複合加工機における,送り(Z軸)方向および切り込み(X軸)方向運動に伴う熱変位特性の測定評価システムを開発し,(1)送り(Z軸)方向運動,(2)切り込み送り(X軸)方向運動,(3)旋回(B軸)送り運動の各送り運動に伴う熱変位特性を実際に測定評価した.その結果,評価対象とした複合加工機の構造形態や熱源の位置等に即した熱変位特性が評価でき,測定評価法として有効であることが明らかとなった. 2.得られた各測定点での6軸方向熱変位の測定結果を,複合加工機の構造形態等の情報とともに総合的に解析することで,機械全体での熱変形モードが推定可能であることが明らかとなった.この推定結果は,測定評価試験時に測定した機械各部の温度変化とも整合しており,妥当なものであると考えられる. 3.提案の方法の規格化を目指して,開発した直進運動用の2種類の測定装置を用いて各運動に伴う熱変位特性を測定評価した結果,次のことが明らかになった.1)Z方向ターゲット治具を用いた熱変位測定により,複合加工機の各運動に伴う熱変位特性を十分に評価できる.2)Z方向ターゲット治具は,工作物に相当する位置にあり,加工精度に直接的に影響する熱変位の評価が可能である.3)熱変形モードとそのメカニズムを明確に評価するためには,Z方向ターゲット治具に加えてX方向ターゲット治具による熱変位測定を行い,それらを総合的に評価することが必要である.4)工作機械の熱変位特性試験法として規格化する場合には,Z方向ターゲットを用いた試験が適当であると言える.
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