研究概要 |
本研究においては,B_4Cを骨格構造とする高耐熱B-C-X系硬質膜を切削工具にコーティングし,需要が高まる難削材の高効率加工の実現を目的とする.平成18年度は,DCマグネトロンスパッタリング法によるB-C-X系硬質膜創成に関する基礎的知見集積を目指して実験を行い,以下のことが明らかとなった. 1.反応ガスとしてCH_4ガスを用いてB-C系硬質膜を創成することにより膜中の炭素含有量および水素含有量を制御し,摩擦係数を0.2程度まで低下させることが可能であった. 2.B_4CターゲットとCターゲットを用いた二元スパッタリング法において,炭素含有量を最適化することにより高硬度かつ低摩擦特性を示すB-C系硬質膜の創成が可能であることがわかった. 平成19年度は,実際の切削工具にTi-B-C薄膜をコーティングし,難削材の一つであるTi合金の旋削実験を行った.その結果,以下のことが明らかとなった. 1.Ti添加量の増減により,Ti-B-C薄膜の密着力の制御が可能となった.また,反応ガスとしてCH_4ガスを用いることにより無潤滑下でのTi-B-C薄膜の摩擦係数を0.2程度まで低下させることができた. 2.超硬合金製スローアウェイチップにTi-B-C薄膜をコーティングすることにより,Ti合金のドライ切削においても切削抵抗が低下し,被削材(Ti合金)の表面平滑性は向上した. 上記の結果は,我々が高性能化を進めてきたTi-B-C薄膜を工具上にコーティングすることにより,生産性向上に繋がるドライ環境下での難削材加工が実現可能であることを示すものであり,当初の研究目的を達成することができたと言える.
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