研究概要 |
金属などの導電体の加工法に比べ,ガラス,圧電セラミックスなどの無機絶縁体への微細加工法は進展が遅れている.そこで,本研究では,絶縁体に微細形状を創成する電解放電加工法の加工性能を改善することを目的とした. (1)加工状態の測定 瞬時のエネルギー密度を高くし平均のエネルギーを低く抑えることで形状精度を向上するために,放電加工で通常用いられる1ms以下の短パルス放電における加工特性を測定するとともに,気泡の発生状態を観察した. パルスを印加した場合には,最初は電流が流れて電気分解により気泡が発生する.その後,絶縁状態になるため,放電が発生する.パルスの休止時間を長くすると気泡が消滅するため,ふたたび電流が流れるフェーズが現れる.したがって,パルス幅が短くなりすぎると,加工が進行しないことが明らかになった. (2)多電極式加工ユニットの製作 放射状に6本設置した電極を,加工部ではドットインパクトプリンタのように一列に配置した.構造を簡単にするために電極送り用のアクチュエータは用いなかったが,電極ホルダの自重による送りでも加工特性には影響がない.独立に電圧を印加するために,それぞれの電極間は電気的に絶縁した. (3)加工メカニズムの解明 放電分散の効果を明らかにするために,1本の電極で加工してクラックが発生しやすい条件を実験的に探索した.その結果,周波数10Hz,デューティ80%でクラックが出やすいことが明らかになった.この条件で,電極1本のみで加工(単電極),6本の電極を電気的に並列に接続して加工(並列給電),パルス電圧を順次1本ずつの電極に印加(分散給電)の3通りについて加工実験を行った,その結果,単電極や並列給電では加工穴入り口にだれが生じるが,分散給電ではそれらよりはるかに小さいことが明らかになった.泡の流れの影響を受けていると考えられる.
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