研究概要 |
電荷注入式静電フィルタの浄化速度は,注入電極の突起数密度の増加,印加電圧の増加,突起先端と平滑電極の距離の減少,油温の上昇に伴い増加するが,印加電圧の増加や油温上昇に伴い,浄化速度が飽和する傾向がある.本研究は,このような特性を解明することを主たる目的として,2次元形状の静電フィルタモデルを製作し,内部の流れ場を実験によって測定するとともに,数値解析も行い比較検討した.また,これまでは電極対のみからなる単純なフィルタモデルを用いて研究を行っているが,実際の汚染油には金属摩耗粉のような導電性汚染物も含まれている.導電性汚染物を捕捉するために電極間に挿入するフィルタエレメント(コレクタ)の形状や挿入位置が浄化速度に及ぼす影響を明らかにすることも本研究の目的である.本研究により以下の結果が得られた. (1)注入電荷に作用するクーロン力により流れ(イオンドラッグ流れ)が生じ,突起先端から平滑電極へ向かう.その流れは,印加電圧の増加に伴い強くなり,電極間隔の減少に対しては弱くなる.また,負電荷注入時には正電荷注入時より強い流れが生じる. (2)温度上昇に伴い電荷注入量は増加する傾向があり,イオンドラッグ流れは強くなる. (3)平滑電極に捕捉された粒子層の厚さが厚くなると,また,イオンドラッグ流れが比較的強いと平滑電極上の粒子が離脱することを観察により明らかにした.以上より,印加電圧と油温の上昇に伴う浄化速度の飽和傾向は,強くなったイオンドラッグ流れによる粒子離脱によるものであることが明らかとなった. (4)数値解析結果は測定結果と定性的には一致した.今後計算精度を向上させることで実際の3次元形状のフィルタ内の流れを予測できるようになると考えられる. (5)浄化速度はコレクタの形状と挿入位置の影響を受けるが,突起先端付近にコレクタを挿入するのが浄化速度向上に有効である.
|