研究概要 |
本研究は,12-ヒドロキシステアリン酸リチウム石けんグリース及びステアリン酸リチウム石けんグリースに,鉄石けんをはじめとする各種の金属石けんグリース(鉄石けんグリース・銅石けんグリース・アルミニウム石けんグリース)を副石けんグリースとして混合した混合金属石けんグリースを作成し,12-ヒドロキシステアリン酸リチウム石けんグリースとステアリン酸リチウム石けんグリースおよび各種の単一金属石けんグリース,混合金属石けんグリースの摩擦特性に関する実験・比較を行うことで,グリース使用の際,境界潤滑条件における低摩擦発現の必要条件を明確化するとともに,金属せっけん系グリースの適用範囲拡張を目指すものである.また,金属せっけん単体,およびグリースから基油を分離した金属せっけんの摩擦試験も行い,増ちょう剤である金属せっけんの境界潤滑特性への作用機構を調査した. 単一リチウム石けんグリースに比べ銅,鉄,アルミの各金属石けんを添加した混合金属石けんグリースは,20℃から150℃の広い温度範囲で良好な摩擦特性を示すことが分かった.主石けんがステアリン酸リチウム石けんの場合副石けんにヒドロキシ基を持たない金属石けんを混合したグリースの方がヒドロキシ基を持つものより摩擦係数が低い.また,主石けんがステアリン酸リチウム石けんである混合金属石けんグリースの方が主石けんがヒドロキシステアリン酸リチウム石けんの混合金属石けんグリースより摩擦係数が低い。 ヒドロキシ基は石けん構造の中で立体障壁となってグリースの熱安定性を向上させる反面摩擦係数を増大させると考えられるが,このことはヒドロキシステアリン酸金属石けんグリースを用いた場合のみでなく,たとえば銅石けん(単体)を用いた場合90C以上の高温下で同様の摩擦係数の増大を示す.また,摩擦試験の結果からアルミ石けんにおいては基油との分離に際し三次元構造が脆弱であることを指摘した.
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