研究概要 |
非定常三次元構造を有する超音速流れ場の計測法として,アセトンをシードとしたレーザー誘起蛍光法が注目されている.これまで,アセトンレーザー誘起蛍光法は,常温より温度が高い燃焼ガスを対象として開発が行われてきたが,工業上重要なダクト内流れ場の温度は常温よりも低い.この温度領域において,蛍光に関与するアセトンの物性値は未知である.本研究は,アセトンシード超音速ノズル内流れ場にNd:YAGレーザーを入射し,得られた蛍光強度からアセトンレーザー誘起蛍光法による高精度・定量計測に欠くことのできない物性値であるアセトンの紫外光吸収断面積と蛍光放出率を求めることを目的とし,以下の成果を得た. 1.超音速ノズルの設計 超音速ノズルを用いたアセトンの紫外光吸収断面積と蛍光放出率は本研究で初めて提案された方法であるが,本方法では,低温で比較的アセトン密度の高い状態が実現できる.紫外光吸収断面積と蛍光放出率を理論的に考察し,計測に必要な温度・圧力が得られる流れ場を見積もるとともに,ナビエ・ストークス方程式の数値解析コードを開発し,この温度・圧力を達成できる流れ場が生成できるノズルの設計法を確立した. 2.レーザー入射・蛍光受光光学系を設計・製作した.流れ場の各所の測定を行うためには,入射・受光光学系を固定し,ノズル自体を微動装置で移動させる.このため,ステッピングモーターとその制御装置からなる精密三次元トラバース装置を設計製作した.レーザービームをアパーチャーにより直径0.5mmに整形して流れ場に入射し,誘起された蛍光をレーザービーム軸に垂直方向に設置されたイメージインテンシファイア付CCDカメラで記録した. 3.数種類のノズルを製作,温度を系統的に変化させて低温領域における紫外光吸収断面積・蛍光放出率の系統的調査を行い,計測に十分なデータを蓄積,当初の目的を達成した.
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