研究概要 |
本研究は,粒子画像速度計測法(PIV)とレーザ誘起蛍光法(LIF)による計測手法を確立すること,密度成層流体中で円筒が回転運動を開始した場合に生じる流れに適用し,(1)流れの可視化による定性的な流れパターンと分類,(2)成層流体中の速度場変化と濃度場(密度場)変化との相関関係,(3)界面形状の変化に伴う流れの混合,拡散機構,を明らかにすることを目的としている. 実験は,回転円筒(直径8〜20mm)を実験水槽内(水深約360mm)に鉛直に支持して行った,円筒周囲には,軸対称な境界条件を実現するための外円筒(内径340mm)が設置されている.水槽内では,観察領域内において直線的な密度成層が実現している.実験条件は,レイノルズ数Re=r^2ω/v=100〜300,フルード数Fr=ω/N=4〜12である. 渦輪列の発生直後の領域では,均質流体および成層流体の両者に有意な差異はなく,またFr数の効果も認められない.時間の経過に伴い,成層流体中の渦輪列は,Re数およびFr数の増加とともにそのスケールが増加する.一方波長変化に関する限りRe数の影響は小さい.一連の変化過程(渦輪列の発生・融合・合体あるいは分離,スケール変化)に伴って観察される色素パターンの揺動と,その結果形成される特異な界面形状を持つ層構造は,円筒表面の新たな渦構造(渦度)と同期しながらその様相を変える.色素パターンの挙動は,色素の分離に引き続いて起こる収縮と,融合に引き続いて起こる伸長といった半径方向の運動が重畳したものとなる.しかしながら,このような状況であっても,時間の経過に従い密度場変化は緩やかなものとなり,長時間経過後にはは,明暗パターンが極めて曖昧(流れの混合が極めて小さい)となる.これは,流れの混合に関する定常領域に至る一つの目安(いわゆる混合の時間スケールの存在)と考えられる.
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