研究概要 |
実用的な乱流燃焼場として幅広く利用されている噴流,物体後流および平面せん断流には,流れ形態に固有な規則的な幾何学的構造が存在するので,実用燃焼場における渦と火炎の相互干渉過程を光学的に観察し,それに基づいて火炎構造をモデル化することがが容易となる.本研究ではこの特性を活用することとし,一方では外部音場を用いて組織構造を車越化して光学観察を容易にし,他方では詳細なPIV計測と画像解析を行って,渦度輸送方程式内の傾圧項の影響を調べた.そこで研究の最終年度の平成19年度には,上記の流れ場の中で最も単純な二次元非定常噴流を対象とし,火炎と渦輪相互干渉過程における傾圧項の役割を調べた.研究にあたっては,通常重力場に加えて微小重力場における静止一様密度場と静止二層不等密度場中に単一渦輪を放出し,PIVを用いた詳細な画像解析を行った.そのため,二次元単一渦輪発生装置の改良,0.1m/s_2の微小重力場を実現するための落下装置の構築,渦輪の挙動と傾圧トルクの発現挙動を解析するためのPIV計測システムの構築などの独創的な工夫を導入した.PIV計測の散乱粒子には,粒子径約1μmの酸化チタンと線香の煙を用いることにより,微弱な流れへの追随性を改善した.また,二層不等密度場への渦輪の噴出角度を斜め45度に傾斜させるなどの工夫も行った.その結果,密度勾配と圧力勾配の作用に起因して,渦輪堺界面近くに対称に明確な渦度が生成されること,傾圧項の発生領域を境に流速が不連続に低下すること,したがって火炎面のように急峻な密度勾配が存在する場合には,渦と火炎の相互干渉過程において傾圧項の効果が著しく現れることを明らかにした.
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