研究概要 |
ジュール・トムソン効果を利用したジュール・トムソン型のマイクロ冷凍機を,半導体加工技術を使用してまずはシリコン・ウェハー上に作製して,エチレンを冷媒として基本的な性能を測定した.また,この冷凍機においてシリコン・ウェハーの優れた熱伝導率によりチャンネルの流動方向の熱流が性能に悪影響を及ぼしているような結果が得られたため,ジュール・トムソン型のマイクロ冷凍機を同様な半導体加工技術が利用できる感光性のガラス上に作製して,同様な基本性能を測定した. 結果は,熱交換器素材に感光性ガラスを用いた冷凍機における冷却部への侵入熱の減少による性能の向上を確認できなかった.これは,感光性ガラス熱交換器の水ガラスによる接合の際に,流路に水ガラスが入り込んでしまったため,流路の断面積が小さくなり,伝熱面積の減少により熱交換器性能が低下したためと考えられる.また,感光性ガラスを使用した熱交換器とシリコンを使用した熱交換器ではエッチング後の寸法や形状が異なった結果となった.しかし,材質による熱交換器性能の違いを厳密に検討するには,寸法などの材質以外の要因を出来るだけそろえて比較する必要がある.また総体的にガラス熱交換器製作の精度の向上が不可欠である。次に,マイクロ冷凍機のようにミクロなチャンネルを有する熱交換器では,シリコン・ウェハーの優れた熱伝導率によりチャンネルの流動方向の熱流が性能に悪影響を及ぼすなどチャンネルのサイズ効果により通常サイズのチャンネルとは異なった伝熱特性を示すため,ミクロなチャンネルを有する熱交換器をモデル化して熱流動の数値解析を行ったが,現在の実験時の質量流量が大きすぎることがわかった.また,温度効率は,質量流量を減少させ熱交換器素材の熱伝導率を小さくすると向上すると思われる.さらに,独立したマイクロ熱交換器を作製して熱交換性能の実機による個別調査を行ったが,冷媒の質量流量は必要な量を保ったまま流速を抑える工夫が必要と思われる.
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