研究概要 |
固体高分子形燃料電池の実用化・高性能化のために,電極拡散層部を流れる酸素を含む空気・水蒸気と水分液体の気液二相の流動を対象として,マイクロスケール多孔質体内の気液二相流動に関して,圧力損失の測定と流動様相の観察の実験を行い,その結果に基づいて数値解析モデルを作成し,解析計算を実施した.これらより,以下の結果を得た. 1.拡散層の圧力損失は層をなす基材部と撥水材部に分けて考える必要があることを指摘し,あわせて,細孔容積分布に基づき基材部と撥水材部の空隙率の値をそれぞれ決定した. 2.ガス単相流れの測定値に基づき,基材部および撥水材部の絶対透過率の値をそれぞれ決定した. 3.ガス単相流れの圧力損失に及ぼす湿分の影響は,ほとんどないことを明らかにした. 4.気液二相流れの測定値に基づき,液相および気相に対する各相対透過率に関する値を得た.マイクロ多孔質体における相対透過率は,従来良く用いられるWyllieの式と比べてかなり低めの値を示す. 5.基材部と撥水材部の液相相対透過率と気相相対透過率は,細孔径分布からそれぞれの毛管圧力を見積もり,Burdineの式に適用することで,比較的よく再現できる. 6.拡散層の基材部と撥水材部の接触角をそれぞれ測定した. 7.数値解析より,基材部と撥水材部の境界で水の蒸発が生じていること,および基材部の飽和度が大きくなって酸素の拡散を阻害しやすいことがわかった,また,撥水材部の細孔分布を基材側に近づけることで基材部の飽和度を小さくできるものの,電解質膜で十分な水分を保持できなくなることを示した.
|