研究概要 |
1.平成18年度:固体表面上での氷の付着のメカニズムを解明するために,氷の付着力に対する伝熱現象及び界面現象の寄与度を検討した.その結果,以下の結論が得られた. ・氷の剥離挙動が2つのタイプに分類され,それらは,時間比=(最大せん断力到達時間)/(緩和時間)<1のとき,弾性特時間比>1のとき粘弾性特性であることを示した. ・氷のせん断応力(単位面積当りの氷の付着力)は試験板表面での冷却流束よりも試験場の表面エネルギーに強く依存する. ・付着エネルギーは表面エネルギーに依存する. ・せん断仕事に対する付着エネルギー(界面現象)の寄与度の定性的傾向を明らかにした. 2.平成19年度:前年度の結果を踏まえ,せん断応力、試料の表面エネルギーの温度依存性を測定した。また,冷却固体面材料として熱伝導率が高い銅に着目し,銅表面に形成される酸化膜の氷のせん断応力に及ぼす影響を検討した.さらに,固体材料表面での氷の付着の本質的メカニズムを解明するために,走査型プローブ顕微鏡(SPM)やX線電子分光分析装置(ESCA)等を用いた表面分析により,ナノスケール場での,氷の剥離挙動、氷の付着力を測定した.その結果,以下の結論が得られた. ・せん断応力及び表面エネルギーは温度低下と共に上昇し,両者の温度に対する概ね良好な相関が見られた. ・銅酸化膜はそれが除去された直後から新たな酸化膜が形成され始め,その後徐々に形成が進行することを明らかにし,加えて,銅表面の表面分析により,生成される酸化膜の組成とせん断応力の関係を明らかにした. ・ナノスケール場とマクロスケール場での氷の剥離挙動及び付着力を比較した結果,定性的に両者は比較的に良く一致することを明らかにした.以上より,今後のナノスケール場とマクロスケール場の連成理論の構築の端緒を示した。
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