研究概要 |
(1)両極の溶融炭酸塩の基本的な揮発挙動の解明 Li/K系電解質におけるアノード側では,電流密度(電池反応)の増加に伴い,電池反応による生成ガスと共に電解質が揮発することがわかった.Li/Na系電解質におけるアノード側では,電解質とアノード電極であるNiとの濡れ性が悪いため,電解質がアノード細孔に充填されるまでの1週間にウエットシール部などから電解質が漏れ出し,ミスト状に飛散することが電解質揮発の主要因である.一方,Li/K系,Li/Na系電解質におけるカソード側では,電池反応に伴う電解質揮発現象は観測されず,Li/Na系電解質ではカソード細孔内に電解質が充填される3日間にミスト状に電解質が飛散することがわかった.さらに,電極厚みを増加させると電極内の電解質が充填されていない細孔で揮発した電解質がトラップされることで,ガス流路側には極微量な揮発物しか飛散しないことがわかった. (2)電池反応に伴う揮発物の採取・分析 Li/K系電解質を用いたアノード側の電池反応に伴う電解質揮発物を電池内部にプローブを挿入し,画像計測をしながら確実に採取し,分析を行った結果,その元素比はLi/K=15/85mol%であり,Li/K系電解質のLi/K=62/38mol%よりもかなりKが多く揮発していることがわかった.この結果は熱力学データに近く,我々が提唱している電解質が生成水と反応して水酸化物化し,その後生成ガス中のCO2と反応して再度炭酸塩化するという推論を裏付ける結果となった.また,カソード側ではほぼ電解質組成に近い値を示し,電解質の揮発ではなく,液相の電解質がミスト状に飛散していることがわかった. (3)同一電極面内での電流密度の違い(電気化学反応性)による揮発挙動の解明 同一電極内で電流密度分布を形成できる電池枠を作成し,実験を行ったが電池接合部のシール性が悪く,大きな電流密度差をつけることができず,電流密度の電解質揮発現象への影響については明らかにすることができなかった.
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