研究概要 |
リニアモータ駆動の車体荷重左右搬送装置で模型車両の静止輪重比を動的に変えることを可能とした. 次いで, 台車転走装置の軌条輪にひずみゲージを貼付して, 車輪横圧と輪重の測定を可能とするとともに, アクチュエータを利用して遠心力を模擬した横方向の外力を作用させるようにした. これらの装置改修の後, アタック角と輪重比を固定して横方向外力を単調に増加させる場合, アタック角と横方向外力を固定して輪重比を変動させる場合などについて車輪のフランジ乗り上がり脱線を再現し, 脱線に至るまでのアタック角, 輪重比および横方向外力の影響が把握された. その結果を利用して構築した一車輪軸の解析モデルによる数値シミュレーションでは, モデルとしては改善すべき点があるものの, 車輪軸挙動の実験結果に対して理論的な考察が加えられた. 次に, 片輪走行状態となる横方向の引張力を車体に作用させてフランジ乗り上がり脱線の実験を行い, 片輪走行時の輪軸ロール角(片輪の浮き上がり角), 横方向力, および輪軸アタック角が及ぼす影響が把握され, 輪軸ロール角とアタック角の増大が限界脱線係数を減少させることが確認された. そこでは, 片輪走行を起こすだけの横方向力が作用し続ければ, いずれ転覆に至ること, 転覆時に作用する横方向力で生ずる車輪横圧はフランジ乗り上がりに要する横圧よりも小さく, 過度の遠心力の作用下では脱線に至らずに転覆する可能性の高いことが示された. 最後に, マルチボディソフトSIMPACKを利用した一両モデルのシミュレーションにより振り子車両の走行安全性を評価した.振り子梁式車体傾斜車両の解析モデルを構築し, 曲線通過シミュレーションを行ない, 実用中, また実用が想定される振り子角5°および7°の車両では, 曲線乗り心地から制限される限界速度まで速度を向上しても, 安全走行のための輪重減少率の目安(静的60%, 動的80%)を超えないことを示した. また, 数値シミュレーションで車体傾斜係数を特定することにより, 走行安全性評価に関する静的解析の精度向上を実現する方策を示した. これらにより, 振り子車両が安全かつ効果的に曲線通過速度を向上するための基礎資料が得られた. 以上の検討により, 脱線と転覆が複合するような条件下における鉄道車両の走行挙動を明らかすることができた.
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