研究概要 |
強度部材を保護抵抗とする超伝導マグネットの概念設計を進展させると共に、原理実証のための小型コイル試験体の設計の見直しを行った。核融合炉に使用するマグネットの基本仕様の検討を進めた結果,励磁時に流れる短絡電流による発熱を想定される冷凍能力以下に抑制するためには数十μΩ以上の列間抵抗値が必要であることが分かり,当初の計画であったステンレス鋼だけでは抵抗値が小さ過ぎることが判明した。逆に抵抗値が大き過ぎると遮断時の電圧が高くなり層間絶縁が難しくなるため,ステンレス鋼の1000倍〜100,000倍の抵抗率を有する導電性材料が適しでることが分かった。そのような材料の調査を行い,導電性セラミックスと導電性樹脂を候補として適用可能性の検討を進めた。実機マグネットにおいては,導電性セラミックスも有力候補と考えられるが,今回は,製作性と入手性の観点からカーボンを含有した導電性樹脂を選択して「列間絶縁無しのコイル試験体」を試作した。 クエンチ保護の成立性を評価するために所定の磁気エネルギーが必要であるため,外形100mm程度のソレノイドコイルを選択した。超伝導線には定格200 A程度の銅比3の矩形断面のNbTi線を使用した。冷却方式は浸漬冷却とするが,遮断時の温度上昇を評価するためには巻線部を周囲のヘリウムから断熱する必要があるため,巻枠には繊維強化プラスチックを採用した。裸のNbTi線を隙間を開けて巻線した後にその隙間に導電性樹脂を塗り込むことによって,列間に適当な電気抵抗を確保する設計とした。外周側にはカプトンテープを重ね巻きして,周囲のヘリウムと断熱する設計とした。超伝導線の隙間を一様に保つことが課題として残っているが,この導電性樹脂が適用可能であることを実証した。
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