研究概要 |
本研究では,超伝導体のナノ組織制御や重イオン照射により人工的にピンニングセンターを導入し,様々な形態や次元性を有する磁束ピンニング特性を評価し,それを超伝導体の製造工程へフィードバックすることにより,臨界電流密度を向上させ,高特性を有する超伝導薄膜を得ることを目的として以下のような実験を行った. 1.YBa2Cu30yやErBa2Cu30yといった高温超伝導薄膜にナノサイズの微粒子を導入することにより,次元性の異なる欠陥を生成した.これらの希土類系高温超伝導薄膜の臨界電流密度の磁場依存性や印加磁場角度依存性を調べた.格子欠陥の種類,次元性により,その磁場依存性や印加磁場角度依存性にどのような違いがあるかを調べ,臨界電流密度に対して寄与する磁束ピンニング機構を明らかにした. 2.ニホウ化マグネシウム超伝導薄膜に対して,薄膜作成時に酸素を導入し,不純物のドーピングを行った.また基板を変えることにより格子定数との違いから欠陥を導入して,同様に磁束ピンニング機構を調べた.また,微細組織観察を行い,ピンニングセンターとの対応を調べた.さらにナノオーダーのNi層とMgB2層を積層した多層薄膜を作製して,2次元ピンニングセンターの導入に成功した,これらの薄膜の臨界電流密度の磁場依存性や印加磁場角度依存性を測定して,次元の異なるピンニングセンターの特徴について明らかにした. 3.各温度・磁場領域における電界-電流密度特性を調べることによりピンニング強度の分布を調べた.局所的に弱いピンニングカしか持たない部位は,弱い電流でも,量子化磁束がピンからはずれ,運動を起こすため部分的に電圧を生じる.従って,電界-電流密度特性を測定することにより,ピンニング力強度分布を調べることが出来る.このピンニング力強度分布から磁束ピンニング機構の評価を行った.
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