研究概要 |
本研究で提案する光蓄電池ペーパは,光で自己充電するシート状の電池デバイスであり,スタンドアロンで機能するユビキタス軍子機器の充電を必要としないエネルギー源として最適である.ここでは蓄電材と光触媒との複合電極を作製し,光触媒の光酸化還元力で蓄電材に蓄電する光蓄電池を研究開発している.まず,酸化チタン(TiO_2)とカーボンファイバー(CFs)によるTiO_2/CFs電極で光蓄電反応の基礎研究を行った.研究期間内の達成目標は,1)励起ホールの反応経路・光蓄電への寄与を明らかにすること,2)CFsとLiイオンの反応の詳細を明らかにすること,3)表面改質による電極表面と光蓄電の反応メカニズムを解明することの3つである.更にペーパ化のために,導電性高分子ポリアニリンを用いたTiO_2/PANi電極の研究に着手した. その結果,目標1,2に対して,励起ホールは溶媒和脱離を促進してLi-ionとCFsの蓄電反応の活性化エネルギーを下げて光蓄電反応に寄与していることがわかった.また、2,3に対して,入射光子数と蓄電電子数および電極表面での反応ホール発生数の定量的比較から,放電までの過程で励起キャリアが7割以上損失していることがわかり,TiO_2と蓄電電極の間のキャリア損失を減らすことの重要性が示唆された.Tio_2/PANi電極では,Tio2多孔膜とPANiのナノコンポジット電極を作製し,光蓄電電荷量が従来のTiO_2/CFs複合電極の100倍以上の性能を得た.これは,多孔膜内でTiO2粒子が相互に結合しているため,膜表面の光がTiO_2粒子を介して内部に伝播し受光面積が広くなると共に.TiO_2とPANiの接触領域が飛躍的に大きくなったためと考えられる.本研究課題を終えて,光蓄電池の基礎研究が大きく進歩し,実用的な効率を実現するための電極設計方針が得られ,成果として2件の特許出願(特願2007-082111,特願2008-025673)を行った.
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