研究概要 |
本研究は,VLSIの配置配線問題のように解の品質と求解の高速性が要求される問題に対応するために,評価関数曲面の構造に基づいて解の探索過程を適応的に調整する適応学習型最適化法の開発を目的とする。VLSIの配置配線問題ように大規模かつ複雑な評価関数曲面を有する問題に対しては,最適化の過程で評価関数の構造に関する情報を収集・蓄積し,この情報に基づいて解の探索過程を適応的に調整することが,解の品質向上および計算時間短縮に有効であると考えられる。本研究では,生物進化を模擬した遺伝的アルゴリズムに基づく適応学習型最適化法を開発した。遺伝的アルゴリズムは,解の状態を遺伝子コード化し,有益な部分解を交叉を用いて組み合わせることにより,高品質の解を効率よく探索できる。しかし,実際的な問題に応用した際には,理想的な遺伝子コード化および交叉法を見出すことは容易ではない。本研究の特徴は,解の探索過程そのものを遺伝子情報として付加し,観測された評価関数曲面の特徴に応じて探索過程を適応的に最適化する機能を,遺伝的アルゴリズムに導入する点にある。その結果,問題毎に人手で遺伝子コード化および交叉法を調整することなしに,また問題の規模およびモデル化に依存することなく,高品質の解を効率的に求められるようになると考えられる。具体的には次の点に関して検討した。1.遺伝的アルゴリズムに評価関数曲面の構造を遺伝情報として蓄積する機能を加えることにより,探索過程を適応的に最適化する適応学習型最適化手法を構築した。2.評価関数曲面の構造情報を収集する手法,これを遺伝子コード化する方法,この遺伝情報を効率的に利用する交叉法を検討した。3.開発手法を配置配線問題に応用し,有効性を示した。
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