研究概要 |
一般的に,差動回路は非差動回路に比べてノイズの影響を受け難く,消費電力も少ないため,移動体通信機器のRF部に採用されている.平衡型弾性波デバイスとは,複数の平衡端子と非平衡端子を持ち,差動回路で機能する弾性波デバイスである.また,平衡型弾性波デバイスは,フィルタ特性などデバイス本来の機能に加え,平衡-非平衡変換機能や,インピーダンス変換機能を有するため,電子回路の部品点数の削減が期待できる.反面,平衡型弾性波デバイスの設計では,平衡端子の信号のバランス特性を考慮する必要があり,既存の弾性波デバイスの最適設計手法は使えない. 本研究においては,シミュレーションに基づく平衡型弾性波デバイスの解析手法と最適設計手法を提案した.まず,最適設計手法のコア技術である「シミュレーション手法」,「評価手法」,および,「最適化手法」,に関して,新たな技法を示すとともに,それらの有効性を確認した. つぎに,代表的な平衡型弾性波デバイスである平衡型弾性表面波フィルタの構造設計を多目的最適化問題として定式化するとともに,遺伝的アルゴリズム(GA)と独自の遺伝的局所探索法(GLS)を適用してパレート最適解集合を求めた.また,そのパレート最適解集合を分析することで,設計パラメータ数を増やして設計の自由度を高めるならば,フィルタ特性とバランス特性など,複数の異なる性能を同時に改善できる平衡型弾性波デバイスの電極構造が得られることを見出した.
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