研究概要 |
ビヘイビアアプローチとは,動的システムを入出力関係として捉えるのではなく,物理変数の時間軌道の集合(ビヘイビア(behavior))によって特徴付けるという新しい視点に立ったシステム制御理論のアプローチである. 我々は,本補助金のもと平成18年度から2年間に渡って,ビヘイビアアプローチに基づいた大規模ロバスト制御系のモデリングと解析について基礎的な研究を行った.特に,ビヘイビアに基づくロバスト制御理論を発展させることにより大規模複雑システムに有効なモデリングと制御の理論的枠組みを構築することを目指した.主な研究成果は以下の通りである.まず,ビヘイビアの枠組みの下で2次微分形式を用いたロバスト安定性解析を行ない,IQCに基づくロバスト安定条件およびパラメータ依存Lyapunov関数に基づくロバスト安定条件を一般化した.次に,ビヘイビアアプローチの観点から大規模システムのモデリングと分散制御問題を考察し,behavioral interconnectionの概念に基づいて分散制御問題の可解条件を特徴付けた.また,多次元システムに対する2次微分形式の解析を行ない,特に2-D離散時間システムの新しいLyapunov安定条件を2次微分形式を用いて導出した.さらに,ビヘイビアアプローチの枠組みにおける最適推定問題を考察し,最適推定器のアルゴリズムを与えた.最後に,離散事象システムにおいて,スーパバイザ制御問題の可制御性とビヘイビアの可制御性との関係を明らかにした.
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