研究概要 |
本研究は,ASRを生じたコンクリートの残存膨張性を短期間で評価するための促進試験法を開発することを目的として計画したものである。特に,現行のコアの残存膨張量測定法において,試験期間中にコアからアルカリが溶出する問題,および海水や凍結防止剤などによりASRが助長される環境を考慮して,コアを高温のNaOH溶液やNaC1溶液に浸せきするASR促進試験法について検討した。本研究で得られた主な知見を以下に列挙する。 1.保存温度の影響 供試体を浸せきする溶液の濃度が低い場合には,保存温度を高くしすぎるとASR膨張は小さくなり,溶液濃度が高い場合には,保存温度の上昇とともにASR膨張は大きくなった。 2.浸せき溶液の種類とその濃度の影響 保存温度が低い場合には,溶液濃度が過剰に高くなるとASR膨張は小さくなり,保存温度が高い場合には,溶液濃度の上昇とともにASR膨張は大きくなった。また,NaC1溶液よりもNaOH溶液に浸せきしたコアの方が早期に大きな膨張を生じた。 3.初期アルカリ含有量の影響 NaOH溶液濃度と保存温度が同じであれば,NaOH溶液に浸せきする前のコンクリートの初期アルカリ含有量が多いものほどASR膨張は大きくなった。 4.試験開始時のコンクリートの劣化度の影響 NaOH溶液に浸せきしたコアについて,試験開始時にASRによる劣化が進行しているものほど,試験開始後のASR膨張は小さくなった。また,保存温度やNaOH溶液濃度が高くなると,劣化程度の相違によるASR膨張の差は小さくなる傾向にあった。 5.コア径の影響 コア径の相違により,NaOH溶液に浸せきしたコアの膨張率は異なった。 6.コンクリートの残存膨張性を評価するための促進養生条件の提案 本研究の範囲内で得られた結果に基づいて,ASRによるコアの残存膨張性を早期に判定するための促進養生条件の提案を行った。
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