研究概要 |
はじめに,実物大RC床版を模擬した供試体を作製し,融雪剤が散布される環境を想定した塩害促進試験方法を考案した.ここで採用した試験方法は,(1)浸漬試験(10%NaCl溶液への浸漬と乾燥の繰返し,浸漬,乾燥共に3.5日)、(2)散布試験(週1回供試体上面より10%NaCl溶液を散布),(3)内在試験(供試体作製時にコンクリート1m^3あたり10kgのNaClを混入)の3種類である.促進試験の結果,浸漬供試体については顕著な錆汁が確認され(進展期相当),内在供試体については顕著な腐食ひび割れ(加速期相当)が確認された.一方,散布供試体は鋼材腐食発生限界濃度を上回る十分な塩化物イオン濃度が検出されたが顕著な腐食には至らなかった.以上の結果より,浸漬供試体に対しては押抜きせん断試験,内在供試体に対しては輪荷重走行試験を実施し,それぞれ健全な供試体との比較検討を行なった.試験の結果,押抜きせん断耐力は,劣化したものの方が健全なものに比べ,わずかに耐力が増加し,逆に最大荷重時のたわみは減少する傾向にあった.これは浸漬供試体の腐食程度が軽微であったためと考えられる.一方,輪荷重走行試験結果より,内在供試体の腐食ひび割れが顕在化している箇所で,活荷重たわみが卓越し,剛性が低下する傾向を示したが,理論値から算出される疲労破壊時の等価繰返し走行回数は,健全なものと比較しわずかに下回る程度であった.すなわち,本実験の範囲内では,腐食ひび割れが発生するようなかなり劣化が進行した段階であっても,疲労耐久性が著しく低下することはないとの結果となった.
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